初めてセックスをしたとき、二人はのぼせていた。生まれて初めて経験する衝動に流れるようにして身を任せた。
そしてそれからというもの、何かにつけてはどちらかの部屋へこもってお互いの体に触れた。実際、その行為の内容は余りにも幼くて稚拙だったが、しかしそれは二人にとって淫靡な遊びというよりは、まるでテニスの練習が終わった後に疲れや渇きを癒すために水を飲むような、自然で気持ちの良いこととして感じられていた。

宍戸の骨ばって肉の薄い体に触れると、鳳は宍戸へのたまらなく愛しい気持ちを改めて感じた。
たった一つ違いなのにまるで子供のように思っていた鳳のしっかりした体つきに宍戸は不思議な感嘆を覚えた。


鳳の部屋のベッドはいかにも質のよさそうな代物で、しかしその質のよいベッドのスプリングが音を立てて軋む。二人の重みと行いに悲鳴を上げるように。
覆いかぶさる鳳の裸の体には銀色に光るクロスだけがゆらゆらと揺れて、ついそれに目を奪われてしまって目が回りそうになる、と宍戸はいつも思う。

「宍戸さん」
その声でふと顔を上げると、鳳が苦しそうな表情で「目、見て下さい」と言う。言う、というより「懇願する」というような声で。
瞬間、宍戸の頭に血が上る。恥ずかしいことを言う奴だ。それで睨むようにして鳳の目を見つめると、鳳が依然として苦しそうな表情のまま言う。

「宍戸さん、大好き」


宍戸は黙ったまま腕を伸ばして鳳を引き寄せた。
この行為は確認であり祈りでもあった。まるで二人でそうするために生まれてきたかのような。ベッドの中を世界とするなら、そのとき世界には確かに二人しかいなかった。